日々のお仕事のなかで、障害の有無に関わらず、子どもとの関わりについて何らかの悩みを持つ方が多いのではないでしょうか(「目が合わず、話しかけても反応がない」「関わってくれるようになってきたけど、遊びが膨らまない」「全体での指示を理解できない」「先生の言うことを聞かない」等々……)。
様々な悩みがあり、一つ一つ解決方法は違いますので、細かく掘り下げたものもそのうち載せようと思います。今回は、子どもとの関わりの基礎となる、良好な関係の築き方について書きました。多くの子どもにとって有効な方法だと思われるものを挙げていきます。
子どもとの良好な関係の築き方
目線の高さを合わせる
先生と比べると、子どもの背のほうが低いことがほとんどです。そのため、先生が立って話すと、子どもと目線の高さが合わず、威圧感を与え、無意識の間に上下関係ができてしまいます。なるべく目線の高さは合わせると良いでしょう。
集団を対象としている先生でも、朝の受け入れ時や一斉活動中の個別指示、授業中の机間指導、放課後の相談場面など、子どもと一対一で向き合う場面はあるかと思います。そのような時に、目線の高さを少し意識してみてください。
主観ですが、自閉スペクトラム症児で他者への関心がないように見え、そもそも先生のほうを見ることが少ない場合は、目線の高さを子どもより低くすると、見てもらえることが多いように思います。自分より高いところを見ようとすると、主体的に頭や目を動かすひと手間が必要になるので、なるべく子どものハードルは下げておきたいですね。
もう少し意識できる方は、目線の高さだけでなく、目の合わせ方や表情も大切にすると良いと思います。会話場面で目を合わせると、子どもは話を聞いてもらっているように感じます。しかし、目が合い続けるとさすがに気まずくなりますので、いっしょに1つの物を見る等して、適度に視線を外してください。表情は普段から少し微笑むくらいが良いでしょう。子どもから関わりやすくなります。
いけそうだなという子に対してはこれらを試してもらえたらと思いますが、相手の目を見るのが苦痛で、そもそも目を合わせたくない子もいますので、そこは無理せず。関係性を築きたいのであって、目を合わせることが重要なわけではありません。
こちらから挨拶する
普段から元気いっぱいで登園、登校してくる子どもとの関わりは、そのままで大丈夫です。いつも通りに挨拶するなり会話するなり、楽しくコミュニケーションを取ってください。
少し元気がないように見える子どもや、こちらから挨拶をしても返事がない子どももいます。心身の不調がないか、環境に変化がないか等、気にかけつつ、穏やかに「おはよう」と先生から挨拶してください。もし無視されても、叱らないでください。何か嫌なことがあったり悩みがあったりするなかで、頑張って登園、登校してきたのかもしれません。
普段から挨拶をしておくことで、自分の存在を認めてくれる先生がいることに子どもが気づき、何か困りごとがあるときに相談しやすくなります。
程よい距離を保つ
程よい距離というのは人によって異なりますが、例えば、普段から冗談を言い合っていて仲良く見えても、子どもが主導権を握っているようなら、それは近すぎると言えるでしょう。先生からの指示が通りにくく、活動や授業が成立しないこともあるのではないでしょうか。
逆に、子どもから全く話しかけてこない、関わりに行こうとしたら逃げられるという状態なら、もう少し距離を縮めたいところです。せっかくなら笑顔で関わり合いたいですし、このままでは子どもが勉強や人間関係などで悩んでいるときに、力になれませんから。
近すぎる場合は、先生があえて少し高い位置に立って話す、他の先生に協力してもらって顔を合わせる回数や時間を減らす、授業中と休憩中でメリハリをつける等の対応が考えられます。
遠すぎる場合は、物理的に距離を縮める、意識して子どもの名前を呼ぶ、話しかけやすいような態度を心がける等、試してみると良いかもしれません。馴れ馴れしく肩をたたく、下の名前で呼び捨てにする、1日1回は話す機会を作る、ということではなく、あくまで自然にです。
大人との関わりに飢えているかのようにベッタリくっついてくる子どもや、他者への興味が極端に薄い子どもなど、ベテランの先生でもバランスを取るのが難しいケースはあります。職業柄、程度の差こそあれ、プライドもあるかと思いますが、主観で程よい距離について考えるのは難しいことです。他の先生から客観的なアドバイスをもらえるかもしれませんので、子どもとの距離について悩まれている先生は、他の先生に一度相談してみてはいかがでしょうか。
頭ごなしに叱らない
頭ごなしに叱る先生はいないのが理想ですが、一定数いらっしゃいますね……。
子どもの望ましくないない言動には、必ず理由があります。なるべく理解できるよう努めましょう。よく観察すれば何か発見があるかもしれませんし、良好な関係を築けている先生が本人に聞いてみると意外とすんなり教えてくれることもあります。その言動が子ども自身も気づいていない悩みの表れ、ということもあります。
望ましくない言動は、放っておくのでもなく叱るのでもなく、いったん程よく受け止めてください。そのうえで、「それはどのような場面で見られる言動なのか」「無視するべきか反応すべきか」「子どもといっしょに話し合うとうまくいくのか」「次見られたらどのように対応するのか」等について考えてください。他の先生と話し合っても良いでしょう。
叱られることを求めての言動であれば、先生が叱ることでさらに助長することになってしまいます。悩みがあっての言動であれば、それを叱るような先生に相談が来ることはないでしょう。いずれにしても、頭ごなしに叱るのは悪手です。
望ましくない行動を減らし、望ましい行動を増やすための方法としては、「ABA(応用行動分析)」について調べてみると良いでしょう。機能分析の観点は身につけておきたいですね。ABAは教育、療育に携わる先生であれば聞いたことがあるかもしれませんが、よく誤解もされています。正しく実践するためには、書籍を丁寧に読んだり研修を受講したりすることをお勧めします。(ABAについても、いつか何か書きたいと思います)
厳しく叱ることで子どもが言うことを聞くと思っている先生は、それでうまくいった経験があったり、他の方法を知らなかったりするのかもしれません。もし変わりたいと思っている先生がいらっしゃるならば、職場では相談しづらいかと思いますので、外部の機関に相談してみてください。もしよろしければ、できる範囲で私も相談に乗ります。
裏切らない
日々忙しく過ごしていると、話しに来てくれた子どもに「あとで」や「今度ね」といった返事をすることがあると思います。次の機会にその子と話せるのなら良いのですが、適当に流してしまったり忙しくて忘れてしまったりすると大変です。その子は「自分なんてどうでもいいんだ」「先生はうそつきだ」と思います。気にしていないように見えても、その先生に話しかける回数は減っていくでしょう。
大人からしたらちょっとしたことでも、一人ひとりの子どもは「あとで」や「今度ね」の約束をよく覚えています。できない約束はしない、「あとで」といったら手帳やホワイトボードに書き込み、必ずあとで時間をとる等に気をつけて、せっかくある程度関係が築けている子どもを裏切らないようにしましょう。
話をしっかり聞く
子どもから話しかけてきたり、相談があったりするということは、ある程度の関係が築けているということですね。子どもの言うことだからと雑に流してはいけません。特に、相談であれば勇気を出して、先生を選んで話してくれています。良好な関係を保つためにも、子どもの話をしっかり聞いてください。
話を聞く際は、程よく目を合わせる、共感してそれを言葉で表す、否定したり遮ったりせず最後まで聞く、誘導せず子ども本人の言葉で語ってもらう等を意識すると良いでしょう。いわゆる「傾聴」の技術が役立ちます。簡単に身につくものではないのですが、あまり聞きなじみのない方は、ぜひ一度調べてみてください。(傾聴については、当ブログでもそのうち何か書くと思います)
まとめ
今回は、子どもとの良好な関係を築く方法として、目線の高さを合わせることや程よい距離を保つこと等について書きました。ベテランの先生にとっては当たり前のことばかりだったかもしれません。
子どもを人として大切にし、なるべくその子の気持ちに寄り添うようにすれば、子どももそれを感じとることが多いように思います。もちろん発語のない子もです。
先生に余裕がないときは、ちょっとひと休みすることをお勧めします。仕事を休むのはなかなか難しいと思いますので、できる範囲でリフレッシュを。
先生ももちろん人間ですから、いろいろな性格があり、コミュニケーション方法も人それぞれです。立場や対象とする子どもの年齢、特性も様々かと思います。もしも今回書いたことの中で何か使えそうな方法があれば、ぜひ子どもとの関係づくりにお役立てください。
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