小学生、中学生あたりの子どもと関わる先生方には馴染みがあると思われる知能検査WISCの改訂について書きます。最近参加したWISC-Ⅴの講演会の話も少し載せられたらと思います。
ここ10年ほど使われていた知能検査WISC-Ⅳですが、最新の日本版WISC-Vが2022年に刊行されました。現在(2023年6月時点)、先生方が目にする所見はⅣとⅤのものが混在している状態かと思います。私の周りではまだⅣが多い印象です。
しかし、2023年7月に換算アシスタントが発売予定ですので、そろそろ移行が進むことが予想されます。これを機に、改めてWISC-Vの特徴について学んでおきましょう。
WISC-ⅣからWISC-Ⅴへのおおまかな変更点
WISC-Ⅳでは全体的な能力を表す全検査IQ(FSIQ)と4つの指標得点(言語理解指標、知覚推理指標、ワーキングメモリー指標、処理速度指標)が算出されます。
WISC-Ⅴでは「知覚推理指標」が「視空間指標」と「流動性推理指標」に分かれ、言語理解指標、視空間指標、流動性推理指標、ワーキングメモリー指標、処理速度指標の5つを主要指標とします。FSIQと主要指標に、補助指標5つを加え、3つの指標レベルで解釈を行うことができます。
補助指標は、量的推理指標、聴覚ワーキングメモリー指標、非言語性能力指標、一般知的能力指標、認知熟達度指標の5つに分かれていて、検査を受ける人が、算数の応用問題で困難を示す、注意散漫である、ことばにハンディがある等の場合に注目すると、検査を受けた人の理解が進みそうです。もちろん、検査の信頼性を落としたり子どもに不利益を及ぼしたりする可能性があるため、勝手な解釈をしてはいけませんが。マニュアル通りに実施、解釈できる医師や心理士/師の先生の専門領域だと思っています。
後日発売予定の関連指標も加わると変更点も出てくるかと思いますが、現時点での大枠はこのようなかんじです。詳細は日本文化科学社のテクニカルレポート等でご確認ください。
刊行委員の大六先生の講演を聞いて
2023年度 明星大学発達支援研究センターの公開講演会で、日本版WISC-Ⅴの作成者の一人、大六一志先生のお話を聞きました。増枠された定員もいっぱいになるという盛況ぶりで、本当に無料で良いの?という充実の内容でした。
知能検査の解釈については書籍やサイト、SNSで様々な意見を目にしますが、「結果に凸凹があるから発達障害」というのは都市伝説であるという内容を、作った側の先生がおっしゃっていたのは安心感がありました。
知能指数が上昇傾向を示すというフリン効果についても触れていて、前の版であるWISC-Ⅳの全検査IQの平均は105くらいになっている。入学にあたっての判定等では気をつけて。というような話もされていました。WISC-Ⅳの所見を見るときは注意しておこうと思います。
各指標の詳細やWISCの限界点等、他にも勉強になったことがたくさんありますが、大六先生の意図とずれてしまうと良くないので、ここでは省略します。WISC-Ⅴの所見を目にする機会のある先生や、WISC-Ⅴを実施する先生で、まだ大六先生のお話を聞いていない先生は、ぜひ機会を見つけてお話を聞いてみてください。とても勉強になります。
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