気になっていたchatGPTを、ちょっと触ってみました。chatGPTに架空事例を考えてもらい、ついでにその対応についても述べてもらいました。そこに自分の考えも入れてみようと思います。
事例:言葉の遅れがある3歳児
3歳6ヶ月の男の子が、他の子どもたちと比べて言葉の発達が遅れていることに気づいた母親から相談を受けました。彼は簡単な言葉は理解しているものの、二語文をまだ使用できず、言葉の表出が非常に少ないです。
chatGPTの考える対応
chatGPTは次のように教えてくれました。
まず、親御さんに安心してもらうことが大切です。「お子さんのペースは一人ひとり違いますが、早期の支援が発達を促進することもありますので、少し支援を取り入れてみましょう」と伝えます。その後、言葉を増やすために絵本の読み聞かせや、日常の中で簡単な言葉を繰り返し使う活動を提案します。また、発音や単語を遊びの中で楽しく教える方法も紹介します。
外れてはいませんね。保護者の方に安心してもらうのは、今後の支援を実行していくうえでとても大切です。支援についての記述は薄いため、もう少し具体的な対応を挙げられるか聞いてみたところ、以下のようにもう少し語ってくれました。
- 観察と記録:
日常生活でどのような場面で言葉を使おうとしているか、またどの言葉や音に興味を示しているかを観察します。例えば、好きな絵本やおもちゃにどのような反応を示すかを記録することで、興味のあるテーマを見つけます。 - 環境づくり:
言葉を引き出しやすい環境を整えます。例えば、家の中にある物の名前をラベルで貼り、自然と言葉を学べるようにします。また、親子の会話を増やすため、絵本の読み聞かせや、おもちゃで遊ぶ際に「これ何?」「どれが好き?」などの簡単な質問を頻繁に投げかけます。 - モデリングと繰り返し:
親や大人がシンプルな二語文(「大きい車」「赤いボール」など)を積極的に使い、子どもがそれを模倣できるようにします。また、同じ言葉を繰り返し使い、記憶に残りやすくします。 - 遊びを通じた学習:
おもちゃや絵カードを使って、遊びの中で言葉を教えることが効果的です。例えば、動物や果物のカードを見せながら「これは犬だよ、ワンワン」と言って遊びます。 - 小さな成功体験の積み重ね:
子どもが新しい言葉を言えた時は、すぐに褒めてあげることで、自己肯定感を育みます。親の喜びが子どもの自信につながります。
自分の考え
chatGPTってすごいですね。だいたいそんなかんじですが、少し自分の考えを付け加えます。
発達支援に携わる方には、「1.観察と記録」の内容に加えて、自閉スペクトラム症(ASD)の可能性も意識していただきたいですね。言葉の力は、他者(特に、保護者や先生、お友達などの大切な他者)に伝えたいという思いが原動力となって育ちます。そのため、対人関係に課題が出やすいASD児は言葉の発達が遅れやすいです。目が合わない、大切であろう人に興味を示さない、真似というかんじではなく言葉をオウム返しする、独特な言葉を使っているなど、対人場面で気になる点がないかは観察しておきたいところです。
「2.環境づくり」に書いてある内容は、やり方によっては子どもが話すこと、言葉を学ぶことを嫌がってしまい、逆効果となる可能性があるので、個人的にはあまりおすすめしません。環境づくりをするのであれば、まずは物を散らかしっぱなしにしない、テレビをつけっぱなしにしない等、静穏な環境を用意することが大切だと思います。ある物を見てそれを他者と共有する。保護者の声が聞こえるようにする。それによって一つ一つの物とその名称が一致するようになるのではないでしょうか。
「3.モデリングと繰り返し」にあるように、子どもの周りの人が二語文を使用するのは良いと思います。子どもが一語で話しているのを否定するのではなく、二語文の模倣を強制するのでもなく、あくまで大人がさりげなく二語文を使うのが望ましいかと。例えば、子どもが「ボール」と言った場合に、大人は「うん、赤いボールだね」と応答する、という具合に。「ほら、言ってみなさい。アカイ・ボール」と強いるのは無しです。
「4.遊びを通じた学習」に書いてある通り、遊びのなかで教えるのは有効です。教えよう教えようと力みすぎて、遊びであることを忘れないように気をつけて。勉強感が強すぎると子どもも大人も楽しくなくなり、学べるものも学べません。
「5.小さな成功体験の積み重ね」はその通りです。感情的に褒めるのがあまり得意でない人は、子どもが新しい言葉を使った際に、やや明るめに「うん、〇〇だね」とその言葉を使って反応するだけでも大丈夫。伝わったという実感に繋がります。
上記のように、chatGPTの出した答えに対して、少し修正したり情報を付け加えたりする必要はあります。また、これらをそのまま全て保護者の方にお伝えすると、保護者の方が必死に実践して、子どもや保護者自身がしんどくなることでしょう。発達を促す方法のざっくりの提案はAIでもできそうですが、保護者の方に対して何をどのように伝えるかを細やかに配慮しつつ、伝えた後もフォローしていくのは、やはり私たち専門家の仕事であり続けるのでしょう。泥臭く学びつつ、実践を続けることで、より良い支援者になっていきたいものです。
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