はじめに
療育の現場では「活動に参加したがらない子ども」に出会うことがあると思います。また、昨日は参加していたのに今日は参加しない、ということもありますよね。頑張って準備した活動を「やらない」「いや」と拒まれるとメンタル的につらいですし、集団全体の雰囲気が崩れてしまう可能性もあります。
そこで今回は、子どもが活動に参加したがらない背景と、実際にできる工夫を紹介できればと思います。
参加したがらない背景を理解する
子どもが活動に参加しないのには、必ず理由があります。例えば以下のようなものが挙げられます。
- 環境が不安である:慣れていない場所や知らない人に緊張している
- 活動が難しそう/興味が持てない:やる前から「できない」と感じている
- 感覚的に苦手な刺激がある:音が大きい、材料の感触が嫌など
- 切り替えが難しい:前の活動に気持ちが残っている、疲れた
他にもいろいろな背景があるかもしれませんが、まずは目の前のその子が「なぜ参加したくないのか?」に思いをはせ、工夫してみることが大切です。子どもによって背景は様々ですが、いくつか工夫を載せてみます。
工夫1:環境を整える
通い始めて日が浅く、流れに慣れていない子どもは不安でいっぱいです。そのような場合は、絵カードや写真でその日の流れや次は何をするのかといった活動の見通しを示すと、安心できることが多いです。また、集団に入るのがしんどい子どもなら、まずは見通しを持ってもらうために、見学から始めてもよいでしょう。見ているうちになんとなく理解して安心し、やってみたくなる場合がほとんどかと思います。
工夫2:活動を魅力的にする
もしもサーキット運動や工作などの活動にそのままでは乗りにくい場合は、子どもの興味に合わせてキャラクターのイラストを取り入れる(ジャンプするところにハテナブロックを置く、ゴールには旗を置く等)、わくわくできるような色合いにする、キラキラのパーツを1つ用意する、といったように何らかのアレンジをすると魅力度が上がります。
また、難しそうだと感じて参加しないのであれば、ハードルを下げるのも良いかと思います。全員で歌うのが難しいなら手拍子だけしてみる、最初は簡単なコースを組むなどの工夫によって参加しやすくなります。その小さな成功体験を褒め、楽しさを共有し、「できた」と感じるのを繰り返すうちに、難しいことにもチャレンジできるようになっていきます。
工夫3:別のかたちでの参加を認める
触りたくない材料がある、他の子の声が大きいなどの理由で参加しづらいことがあると思います。そのようなときに、決められたことを「やる/やらない」しか選択肢がないと、いわゆる「参加」が難しいかもしれません。見学もひとつの参加のかたちですし、材料配りやゴールテープ持ちなどのお手伝いも、立派な参加のかたちです。他の子の活動参加を害さない限り、基本的にはどのような参加も認め、それも参加であることを言語化してフィードバックすることで、安心してその場にいることができます。
工夫4:気持ちを尊重して安心感を与える
参加したがらない理由がある程度わかっている場合は、「さっきの活動で疲れたんだね」のように、状態を代弁してみましょう。もし理由がよくわからないけどやりたくないようならば、「やりたくないんだね」と気持ちを言葉にして受け止めると良いかと思います。やりたい気持ちもありそうならば、「やりたくないんだね」ではなく、「後でやってみる?」「いったん見ておいてね」と柔らかく伝えておくと、後でその子が落ち着いたときに入りやすくなります。
子どもが「受け止めてもらえた」と感じて安心感を持てるような声掛けをすると、結果的には自分から参加することに繋がりやすいと思います。焦ったり焦らせたりすると、なかなかうまくいきません。
まとめ
活動に参加したがらないことには理由があります。その背景に目を向け、環境を整え、工夫することで、子どもは安心して参加できるようになっていきます。
焦って無理に参加させるのではなく、子どもの気持ちを尊重し、安心してもらうことが、信頼関係に繋がります。待ちの姿勢だと目先の活動への参加は難しいかもしれませんが、長期的には様々な活動への参加、挑戦に繋がっていくことでしょう。
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