偏食と感覚統合 -食べない理由は好き嫌い?わがまま?-

はじめに

「野菜を食べない」「特定のものしか食べない」「食感が嫌で吐き出してしまう」など、家庭や保育所、療育の現場で、子どもの偏食に悩むことは少なくありません。

もちろん、味の好みや食べ慣れないことが理由の場合もあります。しかし、中には感覚の特性が影響しているケースもあります。

今回は、感覚統合の視点から偏食について考えてみたいと思います。

偏食はわがままか

子どもが食べ物を拒否すると、「好き嫌いをしている」「甘えている」と受け取られることがあります。

しかし、本人にとっては本当に苦痛な感覚を避けているだけかもしれません。

大人でも匂いや食感の苦手な食べ物があると思いますが、子どもによってはその苦手さが非常に強く現れることがあります。

そんなときは「なんで食べられないんだろう」という視点で考えてみることが大切です。

感覚統合とは

ざっくりですが、感覚統合とは、視覚・聴覚・触覚などのさまざまな感覚情報を整理し、適切に処理する働きのことです。

これがうまくいかないと、特定の刺激を非常に不快に感じて避けたり、逆に強い刺激を求めたりすることがあります。

偏食の理由はいろいろと推測できますが、その一つとして、感覚統合がうまくいかないことが挙げられます。

食べ物と関係する感覚

偏食について感覚の観点から考えると、味覚だけでなく様々な感覚が関係しています。

触覚

口の中の感覚も触覚の一つです。

例えば、「ドロドロしたものが苦手」「ネバネバしたものが苦手」「果物の繊維が気になる」などの場合があります。

本人は味ではなく「口の中の感触」が苦手なのかもしれません。

よく焼く、外側の皮をしっかりむく、等の対応が考えられます。食べられるものから少しずつ粘り気を強くしていく、なんていうのもありかもしれません。

嗅覚

食べ物の匂いに敏感な子どももいます。

大人にはあまり気にならないどころか、全く気づかない程度の匂いでも、強い不快感を感じることがあります。

固有覚(固有受容覚)

少し聞き慣れないかもしれませんが、固有覚(固有受容覚)とは、筋肉や関節で得られる感覚です。嚙むことも、この感覚と関係しています。

例えば、するめ、フランスパン、おせんべいといった硬いものを好む子どもがいます。その子は、強く噛むことで得られる感覚を求めているのかもしれません。

その他

食べ物を口いっぱいに詰め込む子どもを見たことがある先生もいらっしゃるかもしれません。これは、急いで食べているだけという場合もありますが、口の中に刺激を求めている可能性も考えられます。少量では食べている感じがしないという子もいるかもしれません。

行動を見てただ叱るのではなく、「何か理由があるのかな」「この子はどんな感覚を求めているんだろう」など考えてみることも大切だと私は思います。

無理に食べさせるのは逆効果になることも

苦手な感覚を無理に経験させ続けると、食事場面そのものが嫌になってしまうことがあります。子どものときはもちろんのこと、大人になってもその影響が残っている人もいるほどです。

もちろん、栄養バランスを考えると食べられるものは多いほうが良いですし、少しずつ経験を広げることは大切です。しかし、いきなり完食は難しいでしょう。

食べられるものを増やすためには、全て残さず食べることをいきなりねらうのではなく、「匂いだけ嗅いでみる」「少量から試す」「好きな食べ物と組み合わせる」など、スモールステップで段階的に挑戦したほうが、抵抗感が少なくなり、うまくいきやすいことでしょう。また、子どもが頑張ったらぜひ頑張りを認めてあげてください。次につながりやすくなります。

それと、ちょっと難しいところなのですが、感覚はその日の調子や環境によって微妙に変わります。そのため、子ども一人ひとりをよく観察し、前に食べていたからもう大丈夫などと決めつけず、無理をさせないよう配慮すると良いと思います。

おわりに

偏食は問題行動として捉えられがちです。しかし、感覚統合の視点から考えると、子どもなりに理由があることがわかってくるかと思います。

もちろん、全ての偏食がそれで説明できるわけではありません。ちょっとした好き嫌いかもしれませんし、主張の出し方なのかもしれません。しかし、今回載せたような観点もひとつの捉え方として持っておき、「なんでだろう」と考えていただけるきっかけになれば幸いです。

子どもにとっても大人にとっても、楽しい食事になりますように。

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